死亡事故 一発で15点取消から免停180日に軽減
危険を及ぼす運転をしていなくても、事故の当事者になってしまうことはあります。
今回は、自分は過失が殆ど無いのにもかかわらず、事故の加害者となってしまった方の取消処分を180日に軽減した話です。
安全運転していても 誰でもなりうる 一発取消
運転免許制度というのは、欠陥だらけの制度だと私は考えています。
自分に全く過失がないのに、もらい事故で相手が亡くなった場合、死亡事故の基本点数13点に、なんらかの過失がセットでつけられて、
たとえゴールド免許、累積点数0点であっても一発で運転免許は取消になります。
対向車線から自動車がはみ出してきて衝突した
赤信号を無視してきたバイクと衝突してバイクの運転手が亡くなった
高齢者が赤信号を無視して横断してきて接触 転倒した際に打ちどころが悪くて亡くなった
このように、運転手に過失が殆どない、またはは過失があったとしても極微小で一般的な運転者なら避けられなかった
こんな場合であっても、公安委員会は問答無用に15点の取消処分を執行してきます。
意見の聴取、聴聞で主張しないものは救われない
同じ行動をし、同じ結果がそこにあっても正しく対処できないと、過大な処分を受けてしまうことがあります。
警察官が事故現場を検証したとき、悪くない方の過失もあったのではないかと仮定して調書を作ってくる傾向があります。
事故というのは、一方的ではなく、完全に無過失であったということはないのではないか?という考えに基づいてやっていると思いますが、それが殆ど過失のない運転者に苛酷な結果をもたらすことになります。
以前こういう事故がありました。バイクのライダーが対向車線から転倒して飛んできたバイクに衝突し、完全に被害者であるにもかかわらず、自身の安全運転義務違反を認めた内容に調書が書かれたために、免停処分を受けてしまいました。
自身も重症を負い、警察に読み上げられた文章のなかにまさか自分の過失を認める内容が含まれサインさせられていたなんて・・・
道路交通法上、「バイクは左よりを走行しなけらばならない」などないのに警察官からあなたも過失がありましたねという内容にサインさせられてしまいます。
そうなると、行政処分をする公安委員会としては、制度を当てはめ杓子定規ともとれる処分をしてくるわけです。
過失割合は極めて低い貰い事故なのに、安全運転義務違反があった場合、過失割合低い相手が重症なので9点という制度上の点数がそのままついて処分されます。
この場合、聴聞や意見の聴取に出席しないと当然そのまま免停処分になるのですが、仮に聴聞や意見の聴取に出席したとしても、公安委員会の聴聞官の誘導により結局過失を認めさせれれ処分が執行されてしまうことになります。
正しい知識をもち、正しく主張し、間違った回答をしないということがとても重要になります。
書面と可能な限りあつめた証拠書類をもとに、私に安全運転義務違反は無かったと主張する必要があるのです。だって本人も相手が悪く、自分はなにも悪い運転してないと思っているんですから。
それでも警察の事情聴取では「とはいっても相手も大怪我してるし、あなたに落ち度ありましたよね? 反省してないんですか?」などと仕掛けてきます。警察官の誘導尋問に、知識のない素人で経験のない人が耐えられるでしょうか?
そんな形で聴聞や意見の聴取という制度はあっても、殆どの方が活用できずに問答無用の重い処分がなされてしまうことがあるのです。
お互い立証が難しい、曖昧な交差点安全進行違反や、安全運転義務違反
これらについて、自分が悪くないと考えているのであれば、どんな誘導尋問であれ「違反はなかった」と主張を曲げないことは重要です。
もちろん嘘はいけませんが、事故で相手が大けがをしたり亡くなったことの申し訳なさと、私の運転に過失「道路交通法上の違反」は無かった主張はまったく別の話で誘導にのせられてはいけません。
今回の死亡事故のケースにおいても、私は現場の状況と全身黒ずくめで夜間に赤信号を無視して渡ってくる高齢者まで予測して接触を避けるのは不可能であった。
加害者(実際はこっちが被害者だとも思いますが)の交差点安全進行違反は存在しないと証拠書類と動画をもとに提出しました。
実際に赤信号を無視してくるやつまで想定してなきゃ免許取消になるなんて怖くて運転なんかできませんよ
結果運転免許取消処分が180日免停にまで軽減できたのですが、この結果になった理由について
ここからは私の憶測を含む考察にはなりますが、公安委員会がどういう論理的構成でこの処分に至ったかについて説明しようと思います。
聴聞(意見の聴取)までの流れ
福岡県の場合、火曜日は免停予定者、木曜日は取消予定者が聴聞(意見の聴取)に呼ばれます。
毎週50人前後もの人が出席しているように見えますので、いかに取消処分になってしまう人が多いかというのがわかります。
殆どの出席者は正しい知識をもっておらず、呼ばれたから来ただけといった感じです。
毎回ですが、私が補佐人をした人以外は誰も助かってないように見えます。
なぜこのような場が設けられているかというと、行政手続法という法律の13条に「行政庁は、不利益処分をしようとする場合には、次の各号の区分に従い、この章の定めるところにより、当該不利益処分の名あて人となるべき者について、当該各号に定める意見陳述のための手続を執らなければならない。」となっているからです。
聴聞(意見の聴取)では、事実関係について間違いがないかを確認されます。
間違いなければ 間違いない 間違えていたら 間違えている
と述べる必要があります。 殆どの人が、間違いありませんという以外に言い逃れができない雰囲気になると思います。
そして「意見はなにかありますか?」と聞かれますが、意見なんてだいたいただの言い訳にしかならず法的にみて処分が軽減されるに至るものなどそこで出るわけがありません。 なのでそこでだいたい聴聞は終了し流れるように取消処分になっていきます。
なので最低でも処分が軽減されるのが妥当であるという書類を事前に提出しておくことがとても重要になります。
書類がないと、口頭の説明だけでは何も記録がのこらず、仮にそれなりの理由があったとしても処分が変わる根拠書類がないので良い結果になることはないでしょう。
書類を事前に提出し、それを基に、聴聞官が質問をしてくるという形にもっていきたいです。
公安委員会の判断基準
公安委員会は、事故現場検証の結果に関する記録と、加害者の供述した内容の調書を基に運転免許取消処分に該当しているので、処分を執行しますという方向で話が始まります。
読み上げられた事故の内容について、とても気になる箇所がありました。
「青信号で交差点に進入したところ、赤信号を無視して横断してきた歩行者に接触し の前に 「安全確認をする必要があったにもかかわらず、それを怠り」と読み上げられました。
事故の内容の長い文章の一文に 安全確認を怠ったことを自白させる内容が含まれているのです。
それに対し、はい 間違いありませんと答えれば、自身の過失(道路交通法上の交差点安全進行違反)により基準どおり15点で取消処分になってしまいます。
今回の争点としては、道路の構造上、非常に確認が難しい交差点であり、夜間に上下靴ともに黒色を身に着けた高齢者が突然でてきたら接触は避けれないという状況を書面と写真、動画で説明しました。
補佐人としては、過失はなかったと主張しました。
しかし公安委員会(聴聞官)としては、そうはいってもやはり安全確認上の過失があったと考えており、それを加害者本人に尋問してきます。
過失を認めないのですか? その口調が 通常であれば恐ろしくて 認めざるを得ない誘導尋問に感じました。
そのやりとりは20分程度あったかと思います。
結果、私は目で「誘導されてはいけない 認めてはダメと」合図を送り 加害者も涙を流しながら過失はありませんでした と最後は発言しました。
つまり、公安委員会としては、 回ってきた資料からは過失があるとなっているが、聴聞(意見の聴取)で過失を認めない場合、
極端な話 過失がないので 0点 になるわけです。
0点 か15点か 過失を認めるか 認めないかの差
世の中 イエスか ノー だけで語れるはずがないのに、行政庁としてはそのように判断しているようです。
私の意見としては、本当はもしかしたらもう少し注意すればギリギリで避けれたかもしれないから、過失が1%とか ほぼないんだけどという感じで主張したいのですが、それだとイエス はい15点 となってしまうのです。
では、聴聞(意見の聴取)で過失を認めなかったらいいじゃん!
と思う方もいると思いますが、そう簡単な物ではないです。
認めない場合、再度事実関係、現場検証の結果を勘案して警察内部(公安委員会で)裁量にて決定すると思います。
あからさまにおかしな事実関係の否認はかえって反省してないから取消と悪い結果をもたらすと思います。
過失を否認した結果 公安委員会がどういう工程で処分を決めたか
ここも私は行政庁ではないので憶測になりますが、やり取りを考えた結果おそらくそうであろうという内容になります。
行政庁としては、我々が否認してしまった以上、処分なしの0点なのか やはり過失があり15点にするのかというところです。
おそらく、過失がないとなれば行政事件訴訟で過失がないのに処分をしたという違法を理由に取消訴訟の可能性がでてきます。
事務手続き上そんな面倒なことは避けたいと考えるのは当然だと思いますが、明白に過失があるのに過失を否認した場合は問答無用の取消処分となったと思います。
今回のケースでは、取消訴訟になった場合、勝訴する可能性は十分あったと思います。(だって運転手さんほんとに悪くないですから)
なので、公安委員会は180日免停の軽減書面を見せてきて、ここで手打ちという提案をしてきました。
これがどういうことかというと
過失を我々が認めなかった以上 処分はやりなおし 再度調査して決めなければいけない
しかし、死亡事故という結果の重大さから処分なしの0点とまでいえるのか?
というところから180日免停に軽減することで手打ちをしましょうという提案であったと思います。
過失を認めて180日免停にサインください という流れになりました。
もともと180日に軽減んしてくれる用意はしてありました。
なぜなら、そのプリントがその意見の聴取現場で既に作られていたから
意見の聴取中は過失は認めなかったのですが、180日免停処分の書類にサインしたことで、過失は最終的に認めたことになったという結論でした。
もし、あの場で運転手が過失を認めていたら はたして取消は回避できていたのか?
そのまま取り消された可能性、書類から処分が苛酷すぎると軽減してくれた可能性
両方あったと思います。
ただ、今回の対応としては、これで間違ってなかったのだと思いました。
高齢者はちょっと転倒しただけで死んだりします。
筋力も弱っており、受け身姿勢がとれずに、回復力も弱いです。
そういった被害者側の健康的な要素については、殆ど考慮されないんだなあと思いました。
身体が弱かったからちょっと転ばせただけで死亡事故になったなんて最悪なケースもありうるという事です。
運転者の皆様、 安全運転には本当にお気をつけください。
免許がなくなると 生活できなくなるんだから
最後に、今回聴聞を担当した公安委員会の方
聴聞最中はとても怖い、しかも全く融通の利かない最悪な人に当たったと思いましたが、ちゃんと書類、提出した動画にまで目をとおし考慮頂いたことに感謝します。
ありがとうございました。